リピート率80%が会社を救った。エコロギーが逆風から売上13倍を実現するまで
この記事でわかること
- SNSの逆風で商談120件が翌月3件に激減した経緯
- 池田代表が危機から2〜3ヶ月でピボットを決断できた理由
- 初回面談の開始2分で「売上10倍にできます」と断言された根拠
- 2023年比で売上13倍(2025年)に至ったWebマーケティング支援の中身
- 外部環境の急変に直面した経営者が、最初に確認すべきこと
インタビュー動画
動画をクリックすると再生されます
SNSの逆風で、主力事業の商談がほぼ消滅する。そこからわずか2年で売上を13倍にする。早稲田大学発のコオロギベンチャー・株式会社エコロギーに起きたことは、外部環境の急変に直面するすべての経営者にとって示唆に富む実例です。本記事では、代表取締役・池田健介氏へのインタビュー(前編・後編)をもとに、危機からの立て直しの道筋を整理しました。
なぜ商談120件は、翌月3件になったのか
エコロギーの当初の主力は、人間向けの昆虫食でした。世界的なタンパク質不足への解決策として昆虫食が注目された時流に乗り、食品メーカーへのBtoB原料供給を軸に、コンビニでの商品発売直前まで進んでいた案件も複数あったといいます。
状況が一変したのは2023年冬から2024年春にかけて。別のベンチャー企業が学校給食にコオロギを導入する取り組みを行ったことをきっかけに、SNS上で激しいコオロギ食バッシングが発生します。エコロギー自身の落ち度ではないにもかかわらず、影響は直撃しました。ブランド毀損を恐れる食品メーカーが一斉に商談を凍結し、約120件あった商談は翌月には約3件に。池田氏は当時の心境を「終わったなと思いました」と率直に語っています。
さらに池田氏を苦しめたのは、数字よりも人でした。自らの声がけで入社した仲間に給与の支払いが難しいことを伝え、整理解雇を進めなければならなかった時間を「胸がぎゅっとなる時間だった」と振り返っています。
この炎上はエコロギーさん自身に原因があったわけではなく、業界全体に向けられた逆風でした。外部環境の急変で売上が消える事態は、どの業界の中小企業にも起こり得ます。重要なのは、この時点で池田さんの会社に「リピート率の高い別事業の種」が残っていたことです。危機のさなかにいる経営者ほど、自社に残っている資産の価値を過小評価しがちです。
売上が消えたあと、最初に何を決めたのか
ピボットの決断は、炎上から2〜3ヶ月後でした。翌月は「会社をどうしようか」と考え込んでいたものの、「自分がどうにかしないと会社はどうにもならない」と気持ちを切り替え、方向転換を決意します。
転換先は、ゼロからの新規事業ではありませんでした。実は炎上前から、爬虫類向けフード「レオバイト」を細々と販売していたのです。市販の人工フードの原材料表示を見ると昆虫が4〜5番目にしか記載されていないことに気づき、「虫が好きな生き物に与えるのに、虫が入っていない」という違和感から、コオロギ粉末を95%まで配合した餌を自ら開発していました。ただ当時は昆虫食が本業だったため、マーケティングをほとんどせず「ラーメン代稼ぎ程度」の売上だったといいます。
イベントでの手売り、専門店への営業、ECモールの委託販売。自力で試した販路は「いまいちだった」と池田氏。土台はあるが伸ばし方が分からない。その状態で、M&Aスタジオとの面談を迎えます。
なぜ初回面談の開始2分で「売上10倍にできます」と言われたのか
面談は「今どういう商品ですか?30秒で説明します」「どのくらい売れていますか?」「リピート率は?」と、テンポよく数字の確認から始まりました。リピート率が約80%と異常に高い。それを聞いた瞬間、同席したMスタメンバー2名が口を揃えて「10倍にできます」と断言します。開始からわずか2分のことでした。
池田氏の最初の反応は疑いです。「本当かなと思ってしまった。失礼かもしれないが、大丈夫かなと」。自分たちなりにマーケティングをしてきたつもりで、専門の委託会社にも依頼していた経緯があったからです。実際、そこからプロジェクトは3ヶ月ほど始まりませんでした。しかし状況がさらに厳しくなる中でもう一度Mスタに相談し、2024年頭から支援がスタートします。
結果は数字が示しています。2023年と2024年の売上を比較すると508%、約5倍。そして2023年と2025年の比較では13倍。「2分で言われたあの10倍というエピソードは、本当に現実になったんですよ」と池田氏は語ります。
「10倍にできます」は勢いで言ったわけではありません。人間向けが炎上で売れなくなった一方で、商品ラインナップには昆虫食性ペット向けの餌があり、しかもリピート率が約80%ある。販売状況を見れば伸ばせる余地は明らかで、ここにリソースを集中するのは論理的な提案でした。ただし付け加えるなら、我々は自信があるので自分たちから売り込むことは一切しません。相手が本気にならないと結果も出ないからです。3ヶ月の空白は、池田さんが本気になるために必要な期間だったと思っています。
2年で売上13倍——実際には何が行われたのか
池田氏がまず挙げたのは、施策の話ではなく視点の話でした。一般的なマーケティング会社に依頼すると「この施策をするとこうなります」という説明にとどまるのに対し、Mスタの場合は「この商品をこういう見せ方をしたら多分こうなるから、そこにマーケティングしたらこうなる」という、商品と事業そのものへの理解から入ってきた。その水準を池田氏は「前からうちの会社で働いていましたか、という視点」と表現しています。
象徴的なのがリサーチの量です。カンボジアの生産拠点での面談後、間を置かずに大量の質問リストが届き、池田氏も1商品あたり数十ページに及ぶ説明書を書いて返す。そのやり取りから「スポットライトの当て方があれもできる、これもできる」という選択肢が見えてくる。手数がクオリティを上げ、クオリティがさらに手数を生む。このサイクルが回り続けたと池田氏は振り返ります。
支援は販売強化にとどまりません。「新しい商品を作りましょう」と後押しされ続け、直近1年では月1ペースで約12の新商品を投入。現在は爬虫類・両生類に加え、ハリネズミやハムスターなどの小型哺乳類、鳥類、さらには養鶏飼料への展開、海外販売への挑戦にも着手しています。
お客さんのことが分からないと真っ当な提案はできませんし、分かろうと思ったら的を外さない質問を重ねるしかありません。入り口のリサーチには全案件で手間暇をかけています。もうひとつ正直に言えば、当時のエコロギーさんは外部環境によって倒産しかかっている状態で、お金をいただきにくい状況でした。それでも我々でないとお助けできない部分があると考え、リスクを取ってお手伝いした案件です。すべての会社が13倍になるわけではありません。ただ、リピート率のように「顧客が支持している証拠」が数字で残っている会社には、必ず伸ばせる余地があります。
インタビューまとめ 対談を経営の視点から振り返ります。
今回のインタビュー動画はいかがでしたか。ここからは、M&Aスタジオ代表・野﨑繁裕(中小企業診断士)が対談を振り返り、明日の経営に活かせるポイントを整理します。
このインタビューから持ち帰る3つの学び
- 危機の直後こそ、感情ではなく「残っている資産」から次の一手を選ぶ
- 伸ばせる事業のシグナルは、売上規模ではなくリピート率に表れる
- Webマーケティングは施策の話ではなく、事業理解の話
進行中のM&Aの条件や、
事業の進め方について
心配ごとはありませんか?
売る・売らないのどちらを選んでも、Mスタにできることがあります。仲介はせず、成功報酬も受け取りません。だから「売らない」という結論も含めて、忖度なくお答えできます。
【売ってから気づいても手遅れ】M&Aで後悔しやすい社長の特徴...あなたは大丈夫?【教えて野﨑さん/第35回】
- M&Aの条件を見直したい 進行中の案件や提示された条件を、成約に利害を持たない第三者の視点で検証します(セカンドオピニオン)。
- まだ売らずに、会社を磨きたい 財務戦略・Web・動画の実務支援で、企業価値そのものを高めます(バリューアップ支援)。



