譲渡対価5000万円で手数料2000万円なら残りは3000万円——1億円未満のM&Aで、アドバイザーをどう選ぶか
この記事でわかること
- 最低報酬2000万〜3000万円の仲介が、小さな会社の手取りを削る仕組み
- 譲渡対価1億円未満で「手数料5%」が目安になる理由
- マッチングサイトとアドバイザーで、500万円ほどの価格差が生まれ得る理由
- 最低報酬500万円・平均5.8ヶ月を支えるビジネスモデルの中身
- スモールM&Aを急いだとき、譲渡後に出てきやすいリスク
インタビュー動画
動画をクリックすると再生されます
後継者のいない中小・零細企業にとって、M&Aは廃業に代わる選択肢になりつつあります。ただ、譲渡対価が数千万円の会社では、仲介手数料が手取りの大半を占めてしまうことがあります。マッチングサイトで済ませるべきか、人のアドバイザーに依頼すべきか。白潟総研グループでスモールM&Aを手がけるM&Aイノベーションの畦田社長と、M&Aスタジオ代表の野﨑が、手数料の考え方とアドバイザー選びの勘所を語りました。
なぜ小さな会社のM&Aでは、手数料が成約の壁になるのか?
畦田社長は、スモールM&Aが増えている背景に経営者の高齢化と後継者不在を挙げます。後継者がいない会社は「約半数」にのぼり、その多くを中小・零細企業が占めます。野﨑も、後継者不在とされる会社は中堅規模よりも、従業員5〜10名未満の会社が圧倒的に多いと話します。
こうした会社がM&Aを選べなかった理由の一つが手数料です。畦田社長によれば、M&A仲介業界には最低報酬が2000万〜3000万円という水準もあります。譲渡金額が数千万円の会社でその手数料を払えば、「オーナーの手取りもなくなってしまう」。野﨑の試算では、譲渡対価5000万円で手数料2000万円を払うと、手元に残るのは3000万円です。
野﨑は前職でM&Aアドバイザーとして働くなかで、手数料がもう少し低ければ成約し、売り手・買い手ともに喜ぶ案件がたくさんあったと感じてきたと振り返ります。
私の経験では、譲渡対価が1億円未満の規模なら、手数料率は譲渡対価の5%ぐらいが一つの目安です。1億円の5%が500万円なので、ここがボーダーになります。
1億円未満であれば、成功報酬が5%程度の会社に依頼するのが合理的だと考えています。譲渡対価5000万円で500万円を払っても、手元にはしっかり残りますから。
手数料が低いマッチングサイトだけで十分なのか?
手数料の高さを避けて、マッチングサイトを選ぶ経営者もいます。野﨑は、それでうまくいくケースもあるとしたうえで、M&Aは「人が手間暇かけて行うもの」だと話します。
日頃少ないリソースで経営している社長が、自ら交渉の矢面に立つ負担は小さくありません。交渉力が足りないために、もう少し高く売れたはずの会社を安く手放してしまうこともあります。野﨑は、こうした価格の差が、譲渡対価5000万円や1億円の案件でも500万円ほどは十分に起こり得ると指摘します。
つまり、マッチングサイトとアドバイザーの比較は、手数料の額だけでは決まりません。交渉によって動く価格の差と、経営者自身が負う手間まで含めて見る必要があります。
規模が大きくても小さくても、お客様にとっては自分の大切な会社です。大切な会社を譲渡する時は、できれば人から話を聞きたいと思うはずです。
人から聞きたいけれど、手数料が高くて聞けない。マッチングサイトにするかどうか迷っている方の多くは、そこで立ち止まっているのだと思います。
手数料を抑えたアドバイザーは、支援の手間をどう賄っているのか?
M&Aは規模の大小にかかわらず手間がかかります。大手の専門会社が、規模によらず同じ水準の手数料を求める理由としてよく説明される点です。では、最低報酬を抑えたアドバイザーは、その手間をどう賄っているのでしょうか。
M&Aイノベーションの最低報酬は500万円です。畦田社長は、これを可能にしているのはビジネスモデルだと説明します。同社は経営コンサルティングを手がける白潟総研グループの子会社で、グループの中心は売り切り型ではなく、月次で伴走するコンサルティングです。成約したお客様のPMI(M&A後の統合作業)の支援にもつながるため、成約後の連動によって価格を抑えられるといいます。
もう一つの特徴が期間です。同社の成約までの期間は平均5.8ヶ月。数十億円の案件では買い手の意思決定に時間がかかりますが、数千万〜1億円規模であれば「まずはやってみよう」と判断が早くなるためだと畦田社長は話します。
体制も意図して絞っています。畦田社長によれば、中期経営計画では2028年までの人員を33人に止める方針で、収録時点では25人ほど。年に2〜3人ずつ採用し、「あえて船を小さくまとめる」ことを選んでいます。コンサルティング会社は人が全てであり、人がきちんと育ってこそお客様を元気にできる、という考えからです。
手数料の水準は、その会社の収益構造と切り離せません。コンサルティングというストック型のビジネスがコアにあり、固定費を過度に上げずに売上と利益を伸ばしていく。
そうした安定した基盤があるからこそ、高い最低報酬をチャージしなくても、グループ全体として収益性を維持しながら成長していけるのだと思います。
小さなM&Aで、売り手が見落としやすい落とし穴は何か?
意思決定が早いことは、スモールM&Aの利点であると同時にリスクにもなります。畦田社長は、急ぎすぎた結果、M&Aの後工程で問題やリスクが表面化することがあると話します。
譲渡対価が数千万円規模だと、「決算書を少し見たら大丈夫でしょう」と考える経営者もいます。それでも畦田社長は、できるだけDD(デューデリジェンス:買い手が対象企業の財務や事業を調査し、リスクや企業価値を確認するプロセス)を行ってほしいと勧めます。たとえば中小・零細企業では労働時間の管理がほぼできていないことがあり、是正すれば労務費がどれだけ上がるのか、残業を減らすにはどう業務を回せばよいのかを、譲渡の前から考えておく必要があるといいます。
買い手側の事情もあります。畦田社長によると、同社の買い手には初めてM&Aで会社を買う企業が多く、数億円規模ではリスクが高すぎるため、まずは小さな案件で試したいと考えています。成功したら「ストロングバイヤー」として買収を重ね、会社を成長させたい。そこまで一緒に歩んでほしいという買い手が多いそうです。
私は、規模が小さいという理由だけでM&Aイノベーションさんをご紹介しているわけではありません。実際にお会いして、規模は小さくてもビジネスモデルができている、買い手が取得した時に相乗効果が出そうだと感じた会社をご紹介しています。
10年以上M&Aアドバイザーをやってきた立場から見て、大半は、規模は小さくてもストロングポイントのある会社です。
畦田社長は、後継者問題によって廃業が視野に入っている潜在層が約50万社あると話します。そうした会社が消えれば雇用が失われ、日本の経済も落ち込んでしまう。小さな会社のM&Aをどう進めるかは、その会社を次の担い手へどう引き継ぐかという問いでもあります。
インタビューまとめ 対談を経営の視点から振り返ります。
今回のインタビュー動画はいかがでしたか。ここからは、M&Aスタジオ代表・野﨑繁裕(中小企業診断士)が対談を振り返り、明日の経営に活かせるポイントを整理します。
このインタビューから持ち帰る3つの学び
- 手数料は「率」ではなく、譲渡後に手元に残る金額で比べる
- 手数料の安さだけで選ばず、交渉力で動く価格の差まで含めて判断する
- 意思決定が早い小さな案件ほど、譲渡前の調査で譲渡後の課題を洗い出しておく
進行中のM&Aの条件や、
事業の進め方について
心配ごとはありませんか?
売る・売らないのどちらを選んでも、Mスタにできることがあります。ご相談は無料です。私たちの収益は一件の成約に依存していないため、「売らない」という結論も含めて、忖度なくお答えできます。
【売ってから気づいても手遅れ】M&Aで後悔しやすい社長の特徴...あなたは大丈夫?【教えて野﨑さん/第35回】



