家族で暮らすなら資産10億円が目安——税金目当てのシンガポール移住が「1〜2年で帰国」に終わる理由
この記事でわかること
- 税金だけを見て移住した人が「得をしたのに後悔する」理由
- 仕事をせずに家族で暮らすなら資産10億円が目安とされる計算の中身
- シンガポールの教育・医療・年金制度が日本とどう違うのか
- 移住した家族が1〜2年で帰国してしまうケースの共通点
- 移住を考え始めたら最初にやるべき「1〜3か月の短期滞在」の中身
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「日本は税金が高いから、いっそ海外へ」。そう考えてシンガポールやドバイに移る富裕層が増える一方で、「行かなければよかった」と日本に戻ってくる人も少なくありません。税金だけを見れば得をしているはずなのに、なぜ後悔が生まれるのか。シンガポールに20年以上暮らし、超富裕層の資産運用の管理に加えて、移住や海外での子育ての相談にも数多く向き合ってきた宮地さんに、M&Aスタジオ代表の野﨑が、移住のきれい事ではない現実を聞きました。
税金目当ての海外移住は、なぜ「得をしたのに後悔」で終わるのか?
宮地さんによれば、海外に移住した人は、うまくいく人と後悔する人に「はっきり分かれます」。後悔する人に共通するのは、税金だけを見て移住を決めたことです。
金銭面では確かに得をしています。それでも、これだけ頑張って税金を減らそうとしたのに「この5年間は何だったのか」「この10年間は何だったのか」と振り返ることになる。宮地さんは、そこには「お金だけでは見えない部分」があると指摘します。
影響が特に大きいのは、子どもがまだ就学中の家族です。子ども自身が移住を積極的に望み、現地にうまく馴染めればよいものの、そうでなければさまざまな問題が生じます。「こうなったら、こう対処する」と事前に考えていた人と、税金だけを見ていた人。その差が、移住の成否を分けているといいます。
日本は税金が高いから、いっそ海外へ。そう考えてシンガポールやドバイに移る富裕層は増えていますが、正直行かなければよかったと、日本に戻ってくる人も少なくありません。長い時間をかけて税金を浮かせようとした結果、お金は増えたのに気持ちはマイナス。これはやはり避けたい結果です。
シンガポールで家族が暮らすには、実際いくら必要なのか?
シンガポールは物価の高い国です。宮地さんは、家族で仕事をせずに暮らす場合の目安として、単純に言えば資産10億円ぐらいは必要になると話します。
根拠は運用利回りです。10億円を、収録時点でおおむね5%ほどの利回りで運用できれば、不労所得は年5,000万円、月に400万円ほどになります。ただし、これも家族構成次第です。宮地さん自身のように子どもが5人いて、全員がインターナショナルスクールに通うとなれば、それでは当然足りないといいます。
資産の持ち方も変わります。海外では外貨で支払う場面が多いため、外貨の割合は自然と増えていきます。宮地さん自身は、現在およそ7割が外貨、3割が日本円だといいます。外貨の中心は基本的に米ドルで、ユーロという選択肢もあります。
一方で宮地さんは、移住したからといってすべてを外貨に替えるのではなく、海外に出てからもポートフォリオとして分散して運用を続けることを勧めます。将来、急に日本へ帰らなければならなくなった場合にも対応できるからです。債券の利金など外貨で入ってくる収益を生活費に回すことも含め、暮らしと運用を一体で考えることになります。
教育・医療・年金は、日本と何が違うのか?
教育について宮地さんは、シンガポールは「完全な学歴社会」だと話します。そのうえで、日本人学校、インターナショナルスクール、ローカルスクールという選択肢があります。
宮地さんの5人のお子さんも、進んだ道はさまざまです。上の2人は日本人学校、その下はインターナショナルスクールに通い、末っ子だけはずっとローカルスクール。アメリカに行きたいと望んだ子はアメリカへ、オーストラリアを望んだ子はオーストラリアへ進み、ローカルでよいという末っ子はそのまま現地の大学に進みました。子どもの考え方がそれぞれ違う中で、「ローカルで頑張って」と一律に決めてしまうのは良くないと宮地さんは考えていました。どの選択肢にもプラス面とマイナス面があり、子どもごとに柔軟に対応するには事前の準備が必要だといいます。
年金制度はかなり充実していますが、対象はあくまでシンガポール人と永住者(PR)です。給与の約37%を積み立てる仕組みで、その一部は医療費にも使えるため、いざという時には積立金から支払うこともできます。日本とは制度が異なるものの、合理的に活用されているといいます。
医療費は、どの病院にかかり、どんな保険に入っているかで大きく変わります。日本からの駐在員や、自営業ではなく一定規模の企業に勤める人は会社の保険でカバーされ、国立の病院であればそれほど高額にはなりません。一方、私立の病院ではまずクレジットカードでデポジットを求められ、相当の金額がかかるといいます。自己負担の割合も保険によってまったく異なり、日本の健康保険とは「全然違います」と宮地さんは話します。なお治安については、日本より良いかもしれないとのことです。
医療保険ひとつを取っても、日本の健康保険とは似て非なるものです。私立と国立でも費用が大きく変わるので、この辺りは移住前にプロに聞いておいたほうがいいと感じました。
移住がうまくいく家族と、1〜2年で帰る家族は何が違うのか?
うまくいく人の多くは家族で移住してきます。ただ、家族で来ても全員が馴染めるとは限りません。特に子どもが小さいと、学校にもシンガポールの生活にも馴染めず、1〜2年で帰国してしまうケースもあると宮地さんは言います。
うまくいく人は、自分である程度準備をしてきています。税金の話ばかりではなく、むしろ税金は「おまけで付いてくる」という考え方です。シンガポールではこういう生活ができ、日本にはないインターナショナルスクールで学べ、その後はアメリカやイギリス、オーストラリアへの道も開ける。そうしたことを常に家族で話し合い、将来計画も含めて移住を決めています。
もう一つの共通点が、撤退の選択肢を持っていることです。万が一合わなければ、1〜2年で帰ればいい。そうした余裕のある考え方で来た人のほうが、うまくいっているといいます。
向き・不向きについても、宮地さんの見方ははっきりしています。ローカルの人とコミュニケーションを取りたい人、英語や中国語ができる人は馴染みやすい。現地の日本人コミュニティは小さいため、そこだけで暮らそうと考えるより、できるだけローカルのコミュニティに入っていこうとする人のほうが長続きしやすいそうです。反対に、税務メリットだけを考えた移住は、家族がいればいるほど難しい面があります。日本にはない暮らしや教育を子どもに経験させたい、自分もしたいと考え、家族も納得している人のほうが長続きしやすいといいます。
海外移住を考え始めたら、最初に何をすればいいのか?
宮地さんがまず勧めるのは、短期で1〜3か月、長ければ1年ほど実際に滞在してみることです。最初から長期で移るのではなく、とりあえず一度経験してみることが大事だといいます。
その際に意識したいのが、一人で行くか、家族と行くかの違いです。子どもが成人していれば別ですが、そうでない場合の単身での移住は、生活が変わったり家族とのコミュニケーションが不足したりと、さまざまな問題が起こりやすくなります。まずは家族全員で話し合い、できれば家族一緒に行く前提で進めること。そして、合わなければ帰るという選択肢を持っておくこと。宮地さんが最初に勧めるのは、この進め方です。
宮地さんは、移住は日本から逃げるイメージで語られがちで、その理由の一つは税金かもしれないと認めつつ、実際にそこで生活することは「暮らしを選びに行くもの」だと話します。海外での生活が本当に好きで合う人には、本当にいい結果になる。そして、家族との暮らしをどう考えるかがまず第一だというのが、宮地さんの考えです。
家族で行くというのは、結構楽しそうだと思いました。シンガポールは狭い国なので、旅行に行くとなればほぼ海外。インドネシアやタイ、カンボジアへのアクセスもよく、海外が好きな方にはいい場所かもしれません。
ただ、物価も不動産も高く、10億円ぐらいないと不労所得ではなかなか生活できない世界だということも分かった上で、家族との生活や教育をどうするのかという観点で考えることが大切だと思います。
インタビューまとめ 対談を経営の視点から振り返ります。
今回のインタビュー動画はいかがでしたか。ここからは、M&Aスタジオ代表・野﨑繁裕(中小企業診断士)が対談を振り返り、明日の経営に活かせるポイントを整理します。
このインタビューから持ち帰る3つの学び
- 節税は目的ではなく、望む暮らしに付いてくる「おまけ」として考える
- 大きな決断ほど、家族全員が納得してから動く
- 「合わなければ戻る」という選択肢を残しておくことが、挑戦を長続きさせる
進行中のM&Aの条件や、
事業の進め方について
心配ごとはありませんか?
売る・売らないのどちらを選んでも、Mスタにできることがあります。仲介はせず、成功報酬も受け取りません。だから「売らない」という結論も含めて、忖度なくお答えできます。
【売ってから気づいても手遅れ】M&Aで後悔しやすい社長の特徴...あなたは大丈夫?【教えて野﨑さん/第35回】



