急落で投げ売りしないために——「過去100年で5割下落は4回」のデータで買い場を決める、プロの荒れ相場ルール
この記事でわかること
- 暴落時に個人投資家が陥りやすい2つの失敗パターン
- 過去100年で指数が5割下がったのは4回だけ、というデータの使い方
- RSI30以下・20日移動平均線からの5%/7%/10%乖離を「買いの目安」にする理由
- 4回に分けて25%ずつ買う、分割エントリーの中身
- 個人が取り入れられる「信用取引をしない・積立を止めない」という原則
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会社を売却すると、まとまった資金が手元に入ります。M&Aスタジオにも、その資金をどう運用すべきかという相談が増えてきました。ただ、投資を続けていれば避けられないのが暴落です。関税をめぐる急落や中東情勢のニュースが流れるたびに口座の画面が真っ赤になり、夜も落ち着かない——そんなとき、プロや何十億円という資産を持つ人たちは、一体何を考え、何をしているのか。シンガポールで5人の子どもを育てながら今もマーケットの最前線に立ち続ける、Nippon Wealth PBのファンドマネージャー・宮地さんに、荒れ相場での判断の「型」を伺いました。
暴落のとき、なぜ多くの人は「一番安いところ」で手放してしまうのか?
プロでも暴落は怖いのか。宮地さんの答えは率直でした。下げは必ず来るものとして事前に理解しているものの、急に下がると「正直ヒヤッとします」。2025年4月のトランプ関税ショックや、2026年3月末のイランへの攻撃による下落の際も、毎回そうだったといいます。
聞き手の野﨑にも苦い経験があります。2年前、モンゴルへの出張中に日経平均が大きく下がった8月5日前後、日本株をかなり手じまいしたところ、そこから見事に反発しました。宮地さんもこの局面では想定以上の下げにヒヤッとしたそうですが、普段からレバレッジをかけず、いつか下げが来ると想定していたことで、結果的にはあの時期が最もリターンの高い時期になったといいます。
では、荒れ相場で多くの人がやってしまう失敗とは何か。宮地さんが一番多いと挙げたのは「底での投げ売り」です。皆が手放すから価格が安くなり、追証(追加保証金)による売りも重なるところが最も安くなる。投げ売りした人は、その「一番安い価格」で手放す側に回ってしまうのです。二つ目の失敗は逆に、「ここが底だ」と思い込んで全力で買いに行くこと。野﨑自身も振り返るように、「今回はついに〇〇ショックが来たのではないか」と考えてしまうこと自体が、良くない判断の入り口になります。
大きく下がるということは、裏を返せば、上がる力・反発する力も強いと見ることができます。この考え方を前提として持っておくことが大事だと思っています。
とはいえ、私自身も2年前の急落では日本株を手じまいし、その後の反発を見て「売らなければよかった」と感じました。本を読んで散々勉強しているつもりでも、急に下げたときには良くない動きをしてしまうものです。
「どこまで下がったら買うか」を、プロは何を根拠に決めているのか?
感情に流されないために、宮地さんが頼りにするのは過去のデータです。まず押さえておきたいのが、過去100年でインデックスが5割下がったのは4回しかないという事実。1929年の大恐慌、1973年のオイルショック、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックで、いずれも時間をかけて下げています。目の前の急落を「歴史的な暴落が始まった」と決めつける前に、まず過去の頻度と照らし合わせるわけです。
そのうえで、買い増しの目安にしているのが二つの指標です。一つはRSI(売られすぎ・買われすぎを見る指標)が30以下になること。もう一つは、株価が20日移動平均線からどれだけ下に離れたか(乖離)です。宮地さんによれば、20日移動平均線から5%の乖離は年に1〜2回ある可能性が高く、7%の乖離は2年に1回ぐらい、10%の乖離は3〜4年に1回ぐらいのイメージ。2025年4月は10%を超えて下がった、めったにない局面だったため、積極的にレバレッジをかけたといいます。
買い方にも型があります。新たにかけるレバレッジを全体で100%とすると、それを4回に分けて25%ずつ買っていく。「この水準まで下がれば、過去はこのくらいの確率で反発した」というデータを自分の中で理解したうえで、「この時にはこれくらいずつ買う」と決めておけば、下げもそれほど怖くないといいます。ただし、過去と同じ動きが必ず起きるわけではなく、あくまで似たように動くという前提です。基準は一部マニュアル的に持ちつつも、来たら必ず買うというわけではありません。
こうした判断のために、宮地さんは毎日インデックスのデータをつけています。今日は乖離が何%か、このままS&P500が動かなければ何日後にRSIが30を割り、乖離が5%に達しそうか。仮に今後5日間まったく動かなかった場合に、RSIが10を割るのか、乖離が5%ではなく10%になるのかといった水準まで見ながら構えます。一方で、その時点で何も起こらなければトレードはしない。聞き手の野﨑が「めったに来ない時だけ動く」と表現した宮地さんのスタイルは、この日々の観察の上に成り立っています。
相場が過熱しているときも同じです。一般的にはRSIが70を超える、あるいは20日移動平均線から上に5%を超えて乖離すると過熱とされますが、相場はかなりの時間、過熱したまま動きます。そのため、過熱してもポジションは変えず静観することが多いといいます。2026年4月にS&P500が10%以上上がった際も、月間で10%以上上がった翌月はどちらかというと下がりにくいという過去のデータを参考にしました。いずれのデータも絶対ではなく、一つの参考として捉えることが前提です。
普段は守りに徹するプロが、急落時にだけレバレッジをかけられるのはなぜか?
荒れ相場を見越して、普段から身構えているのか。宮地さんの答えは逆でした。普段は基本的なポートフォリオを動かさず、守りの資産で運用する。通常のマーケットでは一切レバレッジをかけないか、ネット・アセット・バリュー(純資産)に対してリスクを低く抑えます。たとえばS&P500を買いたい場合でも、純資産に対して8〜9割程度のリスクしか取りません。だからこそ、相場が荒れて「あ、下がっている」とハッとしても、「これは自分が準備していた下げだ」と理解できるといいます。
宮地さんの顧客は一任勘定またはファンドでの運用のため、下げの局面でもほとんど問い合わせはないそうです。それでも2026年3月末から4月にかけては、顧客向けに特別なレポートを毎週出し、「ここは基本的には買い場です」「ここはまだ早いです」とデータに基づいて伝えていました。
ここで一つの矛盾が生まれます。普段はS&P500よりリスクを取らない。でも、S&P500よりはリターンを出したい。この矛盾を埋めるのが、極端に売られたときにだけ、過去のデータに基づいて徐々にかけるレバレッジです。しかもレバレッジ部分は、利益が出ればすぐに確定させます。たとえばS&P500が7,000まで下がり、底に近い水準で買ったものが7,200まで戻ったとする。もう一度下がるかもしれないので、7,100まで下がったら100ポイントでも利益を確定する。一定ラインを超えて上がった時点で、利益が必ず取れる位置にストップを置いておくやり方です。
その代わり、極端なリターンは出ません。10月にS&P500が10%以上上がった局面でも、S&P500ほどリスクを取っていないため、リターンは6〜7%ほどでS&P500に負けたといいます。また、顧客の中に資産をすべて預けるという人は一人もおらず、ごく一部を預けて、大部分は債券や現金で保有しながら、いざという時に底になりやすいタイミングを聞いて少し買い増す——そうした使い方をする人が多いのではないか、とのことでした。
お話を伺っていると、宮地さんのファンドはそれほど高いリスクを取っているわけではなく、結構手堅いやり方をされていると感じました。
レバレッジを使うのは極端に売られた局面だけで、利益が出ればすぐに確定する。リスク管理を徹底したうえでレバレッジを使っている、すごく堅実なやり方だと思います。
個人投資家は、プロのやり方のどこまでを真似すればいいのか?
「下げたときに買えばいい」と考えた人に対して、宮地さんは率直に「火傷することはある」と言います。過去のデータでは、下げた後はまた下がりやすい傾向が出ているからです。翌日に上がる確率は過去おおむね52%ですが、下がった翌日に上がる確率は、実は50%を切っています。下がったところが底かどうかは、正直、誰にも分かりません。
だからこそ大事なのは、下げたら買うかどうかではなく、「どこまで下がり、どこで底を打つか」をデータに基づいて何段にも構えておくことです。この水準なら25%、次の水準でまた25%。それで反発して上がっても気にしない——そうしたやり方であれば、個人でも対応できるといいます。その際に一番大事なのは冷静さです。今はAIも発達しているため、GeminiやChatGPTに日々のデータや過去の動きを入れ、会話しながら「今の乖離は歴史的にどのくらいの水準か」を確かめることもできます。
レバレッジやオプションまで使わなくても、考え方は取り入れられます。日本のネット証券で取引している個人であれば、信用取引は一切しない、自分の中で決めた金額しかやらない、積み立ては継続する。自分がストレスを感じない金額を決めて、その通りにやっていく。宮地さんは、これが一番大事だと言います。
もう一つ注意したいのが、怖がりすぎて市場から降りてしまうことです。過去100年近く、75年、50年、25年のどの期間で見ても、S&P500はおおむね年10〜13%で回ってきました。これに対して2023年・2024年は20%以上、昨年(2025年)も16%上昇しており、平均を上回っている分、今後は元に戻る可能性もあります。ただし、ITバブルのときは大きな上昇が5年連続で続きました。いつ下げるかは分からない以上、自分の判断で「上げすぎだ」と極端にポジションを減らすと、平均的なパフォーマンスよりも相当落ちてしまう。上昇局面で2割ほど減らすような微調整はあり得ても、半分や3割まで減らすのは極端すぎる。一般の方は定額で積み立てていけばよく、積み立ては絶対にやめてはいけないというのが宮地さんの考えです。
私も20年以上金融投資をやっていますが、今のお話を着実にやりきっていたら、一番パフォーマンスが高かったと思います。ただ、それがなかなかできないんです。
一番失敗するのは、大きく下げたときに慌てて売ってしまうこと。そこは最低限、自分の中で決めておくだけでも結果はかなり変わってきます。調子が良いときにこそ急落を想定しておく。相場が良いときにそれを考えられる人はすごく少ないからこそ、大事なのだと思います。
インタビューの最後、急落に不安を感じている人へのメッセージとして、宮地さんは改めて「下げは必ず来ます」と語りました。必ず来るのだから、怖いと感じるよりも準備をしておく。逆に言えば、下げが来たときはチャンスである可能性が高い。どこまで下がるかは分からず、絶対ということもないものの、短期的には戻りやすい。だからこそ自分のリスク許容度の中でリスクを取り、慌てない。宮地さん自身も、トランプ関税やイラン攻撃のときにはハッとしたそうです。それでも、もともと下げはどこかで必ず来ると考えているからこそ、この場合はこう、あの場合はこうと、冷静に分析し判断できる。荒れ相場でプロがしていたのは、特別な予測ではなく、平時の準備を淡々と実行することでした。
インタビューまとめ 対談を経営の視点から振り返ります。
今回のインタビュー動画はいかがでしたか。ここからは、M&Aスタジオ代表・野﨑繁裕(中小企業診断士)が対談を振り返り、明日の経営に活かせるポイントを整理します。
このインタビューから持ち帰る3つの学び
- 下げは「来るかどうか」ではなく「来たときにどう動くか」を平時に決めておく
- 底は誰にも当てられないから、判断を感情ではなく過去のデータと分割ルールに預ける
- 相場が良いときほど急落を想定し、ただし怖がって市場から降りすぎない
進行中のM&Aの条件や、
事業の進め方について
心配ごとはありませんか?
売る・売らないのどちらを選んでも、Mスタにできることがあります。仲介はせず、成功報酬も受け取りません。だから「売らない」という結論も含めて、忖度なくお答えできます。
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