S&P500の3割がAI関連銘柄——「インデックスなら安心」は本当か。ファンドマネージャーに聞く“偏り”の点検法

  • 公開日2026年09月29日

この記事でわかること

  • S&P500の中身が7銘柄で30%強を占めているという実態
  • 個別株とインデックスで同じ銘柄を持つと、分散が効かなくなる理由
  • AIバブル論があっても積立をやめる必要がないとされる理由
  • 過去100年で50%以上の下落が4回——それでも慌てずに済む備えの中身
  • 円だけ、外貨だけに偏らない通貨配分の考え方

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「とりあえずS&P500を積み立てておけば安心」。投資を始める人の多くが耳にする言葉です。一方で最近は、「AIバブルがいよいよ危ない」「S&P500の中身はほんの一握りの会社に偏っている」という声も増えてきました。M&Aで事業を譲渡し、まとまった資金を手にしたオーナーからも、資産運用の相談が寄せられています。そこで今回は宮地氏に話を聞きました。宮地氏はシンガポールに20年以上暮らし、国内の大手証券会社でプライベートバンキング業務に携わってきました。現在はNippon Wealth PBに所属するファンドマネージャーで、自らもS&P500を運用の土台に据えながら、その偏りと長く付き合ってきた人物です。特定の銘柄の売買を勧めるのではなく、インデックスとどう向き合うかという考え方を整理します。

「S&P500を積み立てておけば安心」は、どこまで正しいのか?

宮地氏の答えは「基本的に正しいです」でした。長期・低コスト・分散という3つの視点で見れば、S&P500のインデックスに投資することに問題はありません。ただし「100%それでいいのか」となると少し話が変わる、と宮地氏は続けます。VOOのようなETFや日本で上場しているETFを買うとき、その中身を実際に知っているかどうか。ここがポイントになるといいます。

名前のとおり500社に分散しているイメージを持たれがちですが、実際には7銘柄で30%強の比率を占めています。宮地氏の整理はこうです。同じ銘柄を個別株でも持っている人なら、インデックスの割合を減らしてもいい。反対に、個別株をまったく持っていない人なら、90%以上をS&P500のETFにする運用でいい。問題はインデックスそのものではありません。手元にあるほかの資産との組み合わせにある、ということです。

AIバブルが心配なら、今は積立をやめたほうがいいのか?

S&P500の構成銘柄はAIの比率が高くなっています。AIバブルが弾ければS&P500も下がるはずだと考え、今はインデックスを控えるべきかと迷う人もいるでしょう。宮地氏自身は、長期的には2032年頃までは相場として大丈夫だと見ています。一方で、短期的な過熱感は認めています。S&P500は2023年に20%以上、2024年も同様に上昇し、2025年も16%以上上昇しました。過去100年・50年・25年で見た平均リターンは10%強です。これに比べると、過去3年は「少しオーバースピード」だといいます。ITバブルの時は30%、30%、20%といった上昇が5年連続で続き、その後3年連続で大きく下落しました。加えて今年は大統領就任2年目にあたります。過去にはほぼマイナスか、プラスマイナスゼロになってきた年で、下がりやすいというアノマリー(経験則的な相場の傾向)もあります。

それでも、どのタイミングで下落するのかは「正直、分かりません」。そのうえで宮地氏は、積み立てをしている人はまったくやめる必要はないと言い切りました。毎月1万円のように同じ金額を買い続けていれば、株価が下がったときほど多くの株数を買えるからです。まとまった資金をタイミングを見て投じたい人についても、見方は慎重です。マーケットはどこかで下がるとしても、その時点の価格が自分の入ろうとした価格より安いかどうかは分からない。だからタイミングを見て売り買いするのは良くない、という考えです。宮地氏によれば、S&P500が上昇する確率は、年度ベースで見ると約7割です。一方、翌日に上がる確率は52%程度、翌月に上がる確率は6割程度にとどまります。長く持てば持つほど上がる可能性が高くなる、というのが宮地氏の説明です。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

上がるか下がるかは当てられない。でも価格が下がれば、その分多く買える。マーケットの行方は本当に分からなくても、過去の歴史を見ればS&P500は右肩上がりで推移しているので、定期的に買っていく。お話を伺ってみると、結構シンプルな話だと感じました。

“偏り”はどこに潜んでいて、どう点検すればいいのか?

偏りがより深刻になりやすいのは、インデックスと個別株を組み合わせているケースです。インタビューでは、よくある例が挙がりました。オルカンやS&P500を持ちながら個別銘柄も買っていて、その中身を詳しく見るとエヌビディア(NVIDIA)だった、というケースです。これでは分散が効きません。宮地氏も「そこは本当に重要な点」だとしました。個別株を3割ほど持ち、そこにNVIDIAなどが含まれているなら、S&P500の比率も少し減らす。そのうえで保守的なものや高配当銘柄を入れるほうがいい、という考えです。宮地氏自身の運用は約9割がインデックスです。残りの個別株は保守的で伝統的な銘柄が多く、S&P500と銘柄をまったく被らせない形を取っています。長期投資をしているので、細かな調整まではしていないといいます。

点検の出発点は、中身を把握することです。S&P500のうちAI関連銘柄がどの程度あり、それ以外がどの程度あるのかを知る。そのうえで宮地氏が強調したのは、インデックスの特性です。もしAI関連が下がれば、S&P500の中に占めるその割合も当然減ってきます。つまり、インデックスの中では自動的に分散が効いてくるということです。今は3割ぐらいを占めていても、下がれば勝手に分散されるといいます。

宮地氏がインデックスを主軸に据える背景には、個別株の経験もあります。大手証券時代、宮地氏は自分の口座で運用していました。3か月間は保有しなければならないという前提があるなか、5銘柄ほどが3か月で倍になったといいます。ただし、そうした銘柄は下がるときも同じように動き、倒産したケースもありました。下がると「将来もう少し戻るのでは」と考えて保有を続けてしまう。もともとは短期で考えていたのに、下がると長期投資に切り替えて持ち続けたくなる。宮地氏は、投資家には考え方を一貫させられない人が多いと話します。そうすると、結局は原点に戻ってインデックス投資になるというのです。S&P500であれば、ダメな銘柄は勝手に退場し、良い銘柄が入ってきます。その選別を自分ではなく、スタンダード・アンド・プアーズが担ってくれる。これがインデックス投資の良い点の一つだといいます。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

S&P500を何も考えずに買っている方は割と多いと思いますが、中身を見てみると、現在はAIにかなり偏っています。個別銘柄と重なっていれば、分散は効きません。案外そういうことをご存じない方も多いのではないでしょうか。ただ今日印象的だったのは、仮にAI相場がクラッシュしたとしても、インデックスの中では自然とAIの比率が下がってバランスが取れる、という点でした。

いずれ来る大きな下落に、どう備えておけばいいのか?

「どこかのタイミングでは下がります。間違いなく下がると思います」。宮地氏は下落そのものを否定しません。大切なのは、そのときに慌てないための備えです。宮地氏の答えは、通常のマーケットでは無理をしてレバレッジをかけないことでした。レバレッジをかけずに運用していれば、少し下がっても余裕があり、大きく下がっても慌てる必要はありません。インデックスのうちAI関連は3割ほどで、残りの7割は違います。その中には高配当の銘柄や、安定的に動く伝統的な銘柄も含まれています。そうした銘柄はそれほど下がらないため、個別のAI銘柄が下がったときでも、インデックスはそれほど下がらないといいます。

宮地氏が運用するファンドも、同じ考え方で組まれています。まず、ネット・アセット・バリュー(純資産価値)を100とした場合、通常のマーケットではインデックスへの投資を9割程度にとどめます。そしてS&P500以上のリスクは取らず、それよりも低いリスクに抑えます。投資は先物ベースで行うため、実際に保有しているのはアメリカの国債・社債が9割、現金が1割という形です。「安全運転」というと、国債だけを持つイメージを持たれるかもしれません。しかし実態は、債券とS&P500を主軸にした運用です。宮地氏は、ファンドを運用していない人にも「そのまま利く」考え方だとしています。

冷静でいられる根拠は、過去のデータにもあります。過去100年で、インデックスが50%以上下がったケースは4回です。25年に1回ぐらいの頻度で、しかも1日2日で下がるのではありません。大体600日から900日以上かけて、徐々に下がっていきます。そのため、極端にリスクを取っている人でも、その間に対処の方法を見つけられるといいます。1日で50%も下がれば何も対処できませんし、個別銘柄が固有の理由で急激に売られるケースは、対処するのがなかなか難しいものです。ただ、インデックスにはそうしたことが短期的には起きません。通常のマーケットではレバレッジをかけず、大きく下がったときには状況に応じて一部レバレッジを考えてもいい。過去は年率で10%以上あるのだから、今回下がっても長期で持てば問題ない。そう考えておけばいい、というのが宮地氏の結論です。

資産の“通貨の偏り”は、どう考えればいいのか?

偏りは銘柄だけの話ではありません。シンガポールに20年以上暮らす宮地氏は、海外在住の期間が長いため、日本円の資産はそれほど持つ必要がないといいます。それでもポートフォリオの一つとして、不動産なども含めて日本円の資産を保有しています。宮地氏の場合は、おそらく外貨7割・日本円3割ぐらいです。日本に住む人であれば、逆に日本円7割・外貨3割という形になるかもしれません。比率は一人ひとりの資産背景によって変わります。ただ、日本在住で普段は日本円を使うとしても、ポートフォリオの一部として外貨は必要だというのが宮地氏の考えです。

過去10年、15年と円安が続いてきました。そろそろ円高になるという意見もあれば、200円ぐらいまで円安が進むという声もあります。宮地氏は「どちらにも賭ける必要はない」と話します。ドルでも円でもユーロでも、通貨を分散しておく。そのうえで、たとえばドルが上がったときに、元々3割だった比率を25%や20%にするといった配分は、個々人が決めればいい。ただし、ゼロにするのは絶対に避けたほうがいいといいます。「卵は一つのカゴに盛るな」というように、分散しておくことが大切です。通貨の分散と配分の管理は必ずしなければならず、それを管理できないと将来的にかなり問題になるケースが出てくる、と宮地氏は指摘しました。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

日本の方は、日本円だけで資産を持っている方がかなり多いと思います。前職の地方銀行で担当していた昔のお客様の顔を思い浮かべても、日本円だけで運用している方がすごく多かった。分散については分かったような気になっていても、ちゃんと管理できていない経営者は結構多いのではないでしょうか。

インタビューを振り返る野﨑繁裕 インタビュー
まとめ
対談を経営の視点から振り返ります。

今回のインタビュー動画はいかがでしたか。ここからは、M&Aスタジオ代表・野﨑繁裕(中小企業診断士)が対談を振り返り、明日の経営に活かせるポイントを整理します。

このインタビューから持ち帰る3つの学び

  • 「分散しているつもり」の中身は、保有銘柄の重なりまで点検する
  • 下落に備える一番の手は、平時に無理なレバレッジをかけないこと
  • 相場の方向には賭けず、どの通貨もゼロにしない配分を持つ

今回宮地さんに伺ったのは、「S&P500を積み立てておけば安心」という多くの方が持つ前提を、中身から見直す話でした。500社に分散しているつもりでも、実際には7銘柄で3割強を占め、AI関連への偏りも大きい。個別株でも同じ銘柄を持っていれば、その偏りは二重になります。分散は持っている商品の数ではなく、中身の重なりで決まります。この指摘は、投資経験の長い方ほど見落としやすい点だと感じました。

一方で宮地さんは、AIバブル論を理由に積立をやめる必要はないとも明言されました。下がれば同じ金額で多くの株数を買えます。AI関連が下がれば、インデックスの中でその比率も自然と下がり、分散が効いてきます。売り買いのタイミングを当てにいくより、レバレッジをかけずに余裕を残しておく。それが下落局面で冷静でいるための条件だという整理です。

資産の偏りは、株式の銘柄だけでなく通貨や住む場所にも及びます。宮地さんが語った「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉は、使い古された格言かもしれません。しかし円だけ、あるいはAI銘柄だけに資産が寄っていないかを一度点検すると、その意味は具体的になります。事業を譲渡してまとまった資金を手にしたオーナーほど、まずご自身の資産の「中身」を知ることから始めていただきたいと思います。

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