M&Aアドバイザーの選び方|相談先4タイプの違いと、初回面談で確かめたいこと

  • カテゴリ解説記事
  • 公開日2026年10月13日
M&Aアドバイザーの選び方|相談先4タイプの違いと、初回面談で確かめたいこと
結論先に答えを知りたい方へ

M&Aアドバイザーは「どこに頼めば正解」というものではありません。少なくとも2〜3者の話を聞き、比べてから決めることをおすすめします。

  • 大手仲介・中小ブティック・銀行・税理士には、それぞれ強みと構造上のクセがある
  • 仲介とFAの違いは「誰の側に立つか」。形式より、自社に合う担当者かで選ぶ
  • 比べることを嫌がる相手なら、それ自体がひとつの判断材料になる

会社を売るかどうか考え始めると、M&A会社からの手紙や電話が急に気になり始めます。「今なら高く売れます」「買いたい会社があります」。どれも本当のように聞こえる一方で、誰を信じればいいのかは分かりにくいものです。

しかも、この話は社員にも家族にも簡単には相談できません。一生に一度の決断を、ほとんど一人で、限られた情報の中で決めなければならない。私のところに届く相談の多くは、そうした状況から始まっています。

この記事では、銀行で約10年M&Aアドバイザリーに携わり、現在は特定の会社に偏らずにアドバイザー選びをお手伝いしている立場から、相談先の違いと選び方を整理します。売ると決めていない方にも読んでいただける内容です。

アドバイザー選びで、M&Aの進み方と結果は大きく変わる

M&Aでは「どの会社に買ってもらうか」が一番大事だと考える方が多いと思います。もちろんそれも大切ですが、私はその手前の「誰に任せるか」で取引の大部分が決まると考えています。著書のタイトルを『M&Aはアドバイザー選びが9割!』としたのも、そのためです。

理由のひとつは、中小企業の株式には上場株のような毎日の株価がないことです。価格は、アドバイザーがどれだけ幅広く買い手候補に声をかけ、どんな情報を揃えて交渉するかによって決まっていきます。同じ会社でも、誰が進めるかで出てくる相手と条件が変わります。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

大手の仲介会社で、譲渡価格10億円ほどの話がまとまりかけていた経営者から相談を受けたことがあります。担当者からは「ここで決めないと決まりません」と言われていましたが、ご本人には「もっと良い条件があるのでは」という違和感が残っていました。

私から3名のアドバイザーをご紹介し、経営者ご自身が選んだアドバイザーと仕切り直したところ、100社以上に打診して複数の具体的な提案が集まり、当初よりも数億円高い条件で合意に至りました。目の前の選択肢の外側に、より良い答えがあったケースです。

※個別のケースです。どの会社でも同じ結果になるわけではありません。

動画で見る【M&Aはアドバイザー選びが9割】売却額が数億円跳ね上がった実話

▶ 15:54 から再生されます

相談先は4タイプ。正解ではなく、合う場面が違う

M&Aの相談先は、大きく分けると次の4つです。どれが良い・悪いではなく、それぞれに得意な場面と、知っておきたい構造があります。

相談先 主な強み 知っておきたい点 合いやすい場面
大手の仲介会社 主な強み買い手候補の数が多い。社内に専門家がいてサポートが手厚い。進行が速い 知っておきたい点担当者の経験に差が出やすい(入社数年目の方が担当することも)。最低報酬が2,000万〜3,000万円程度のところが多い 合いやすい場面規模が大きく、買い手が多い人気業種の会社
中小のブティック
(独立系の仲介・FA)
主な強み大手出身の経験者が独立したケースが多く、代表本人や目の届く範囲の人が最後まで担当しやすい 知っておきたい点会社ごとの得意分野や体制の差が大きい 合いやすい場面担当者の経験や相性を重視したい場合
銀行 主な強み取引先のネットワークから相手を探せる。財務への理解があり、買収資金の融資と一体で設計しやすい 知っておきたい点銀行全体の取引関係を優先しやすい面がある。自前で仲介すると、相手探しが銀行の取引先の範囲にとどまることがある 合いやすい場面地域の取引先とのつながりや、融資との連動を重視したい場合
顧問税理士 主な強み会社の数字を一番よく知っている。税務の設計と連動しやすい 知っておきたい点M&Aの実務経験が豊富な税理士は多くない。提携先1〜2社の紹介にとどまることがある 合いやすい場面税務面の相談役として。M&Aの進行役は別に考えるのが現実的

※手数料の水準は会社や時期によって異なります。契約前に必ず各社の報酬体系を確認してください。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

私自身、19年勤めた銀行でM&Aを担当していました。銀行には取引先とのつながりという、専門会社にはない強みがあります。一方で、銀行は銀行の取引関係を大切にする組織です。自前で仲介すれば手数料をすべて自行で受け取れるため、外の専門会社と組むより自前を優先したくなる力が働くことも、内側にいた人間として知っています。

銀行が悪いということではありません。そうした事情を知ったうえで選ぶほうが、判断の質は上がると思います。

動画で見る【大手仲介の弱点は担当者ガチャ】M&A仲介とFAの違い・銀行と税理士も比較

▶ 1:03 から再生されます
Q&A大手の仲介会社や手数料が高いところに頼めば、質も高いですか?Q&A地方銀行にM&Aを相談するとき、何を確かめておけばいいですか?Q&A銀行に会社売却を相談すると、銀行自身の仲介を勧められるのはなぜですか?Q&A顧問税理士にM&Aの相談をしても大丈夫ですか?

仲介とFAの違いは「誰の側に立つか」

アドバイザーには「仲介」と「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」という2つの関わり方があります。大手かブティックかとは別の軸で、違いは図のとおりです。

仲介

売り手・買い手の両方と契約

売り手契約仲介会社契約買い手

両方の事情が分かるため、条件の落としどころを見つけやすい。一方で、高く売りたい側と安く買いたい側の両方から依頼を受ける構造です。

FA

どちらか一方とだけ契約

売り手契約FA交渉買い手側

その側の利益のために助言するため、利益相反は生じにくい。ただしFAも成約しなければ報酬が入らず、FAなら必ず有利というわけでもありません。

2024年8月に改訂された国の「中小M&Aガイドライン」でも、仲介者の利益相反への対応が具体的に示されています。それでも、仲介だからうまくまとまる取引もあれば、FAで進めたほうが良い結果になった取引もあります。大切なのは形式で決めることではなく、自社の状況に合う進め方と担当者を選ぶことです。

Q&AM&Aの仲介とFAは何が違いますか?うちはどちらに頼むべきですか?Q&AM&Aマッチングサイトだけで買い手を探しても大丈夫ですか?

初回の面談で確かめたい3つの質問

アドバイザーの力量は、看板だけでは分かりません。初回の面談で、次の3つを聞いてみてください。

Q1

これまで何件のM&Aを手伝ってきましたか?

10件ほどあれば、ある程度の場数を踏んでいる目安。経験が浅い場合は、ベテランが一緒に責任を持つ体制かを確認します。

Q2

一番苦労した案件は、どんなことでしたか?

経験していれば具体的に語れるはず。そこから何を学び、今どう活かしているかまで話せる人は信頼できます。

Q3

成約した会社や社長とは、その後どんな関係ですか?

良い仕事をした人は、譲渡後の会社を気にかけ、社長と長く付き合っていることが多いものです。

動画で見る【M&A前に確認必須】デキるM&Aアドバイザーか見極めるための3つの質問

▶ 0:33 から再生されます
Q&AM&Aアドバイザーが信頼できるかどうか、どんな質問で見極めればいいですか?Q&A担当案件をたくさん抱えているアドバイザーに任せても大丈夫ですか?Q&AM&Aアドバイザーは、どんな経営者だと本気で力になりたいと思うのですか?

こんな様子が見えたら、一度立ち止まる

反対に、面談の中で次のような様子が見えたら、契約を急がずに一度立ち止まることをおすすめします。面談の後に、チェックリストとして使ってみてください。

面談後のセルフチェック

  • 他社に相談することを嫌がる比較される中でも選ばれる自信のあるアドバイザーは、「他とも比べて決めてください」と言えるものです。
  • 根拠のはっきりしない高い査定額を出してくる実際の価格は、買い手候補に声をかけて出てきた提案で決まります。高い数字を示されたら「なぜその金額なのか」を聞いてみてください。
  • 決断を急がせる「今決めないと相手が逃げます」の裏に、相手やアドバイザー側の決算期などの都合がないか。根拠を示した意見と、都合による急かしは別物です。
  • 実務の経験が乏しい会社の売却は、例えるなら難しい手術です。経験の少ない人に一人で任せてよいかは、慎重に考えたいところです。
  • 成約を急ぐ余裕のなさが見える自分の都合が前に出ている人とは、落ち着いた判断を一緒にするのが難しいかもしれません。

動画で見る【「〇〇」と言ってくるM&Aアドバイザーには気をつけろ】ヤバい担当者の見分け方

▶ 1:07 から再生されます
Q&A「他社にも相談したい」と言ったら嫌な顔をされました。この担当者に任せて大丈夫ですか?Q&A初回の面談で高い査定額を出してくるM&A会社は、信じていいですか?

契約が近づいていても、最後まで「No」と言える

すでに一社と話が進み、来週には契約書にサインする、という段階で迷いが生じることもあると思います。

M&Aは、最終的な契約を結び、代金の決済が終わるまでは、売り手が「やめる」と言える取引です。違和感を残したまま進めるより、一度止まって確認するほうが、納得のいく判断につながりやすくなります。実際に、基本合意の直前で私に相談があり、アドバイザーを選び直したうえで良い相手と成約できたケースもあります。

国の中小M&Aガイドラインも、別の専門家の意見を聞く「セカンドオピニオン」の活用を勧めています。今のアドバイザーを否定するためではなく、納得して進めるための確認として使ってください。

※すでに結んでいるアドバイザリー契約に、専任条項や契約終了後の報酬に関する条項が含まれている場合があります。契約内容の扱いは、弁護士などの専門家と確認しながら進めてください。

動画で見る【大手仲介の弱点は担当者ガチャ】契約直前で迷ったときの考え方

▶ 21:17 から再生されます

迷ったら、比べられる状態をつくるところから

迷っている経営者にいつもお伝えしているのは、次の3つの順番です。

STEP 1

立ち止まる

迷ったまま進むのが一番危ない。急かされているときほど、一度深呼吸を。

STEP 2

全体を見渡す

目の前の一人の話だけでは、視野が偏りがち。中立の視点をひとつ持つ。

STEP 3

複数の意見を確かめる

同じ結論なら自信を持って進め、違えば判断を見直せばいい。

また、そもそもM&Aが最善とは限りません。親族への承継、従業員への承継、今は売らずに会社の価値を高めるという選択肢もあります。アドバイザーを比べる前に、こうした選択肢を並べて眺めてみることも大切です。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

手数料は、ある程度の規模になればどこに頼んでも大きくは変わりません。だからこそ、担当する人の経験と相性、そして自分の側に立ってくれるかどうかで選んでほしいと思っています。M&Aは1年近く続く長い付き合いになります。最後に決めるのは、社長ご自身です。

動画で見る【会社売却、誰を信じる?】M&Aで迷った社長が決断前にやるべき3つのこと

▶ 8:51 から再生されます

よくある質問

Q何社くらい比べればよいですか?

A少なくとも2〜3者の話を聞くことをおすすめします。大手だけ、ブティックだけと同じタイプに偏らず、違う切り口のアドバイザーを並べると違いが分かりやすくなります。

Q「他社とも比べています」と伝えると、気を悪くされませんか?

A比較されることは今では一般的です。伝えにくければ、あえて言わずに複数社と面談しても構いません。比較そのものを強く嫌がる場合は、判断材料のひとつと考えてよいと思います。

Q会社の規模が小さくても相談できますか?

A相談できます。ただし最低報酬が高めに設定されている会社もあり、譲渡価格が1億円未満ほどの場合は手数料の割合が大きくなることがあります。規模に合う相談先を選ぶことが大切です。

QM&Aスタジオに相談したら、紹介先と契約しないといけませんか?

Aいいえ。ご相談は無償で、ご希望があればアドバイザーを複数ご紹介しますが、紹介先以外で決めていただいて構いません。紹介先と契約し成約した場合は、アドバイザーが受け取る成功報酬の一部を私たちが受け取ります。それによって社長のご負担が増えることはありません。

ADVISOR SELECTION

売ると決めていなくても、
相談先を一緒に整理できます

社長のお考えと会社の状況をうかがったうえで、比べて選べる状態をつくるお手伝いをします。今のアドバイザーとの進め方に不安がある場合のセカンドオピニオンにも対応しています。ご相談は無償です。

COLUMNAI時代のM&Aアドバイザーの情報管理|会社の情報をAIに入れる前に、確かめておきたいこと
野﨑繁裕

WRITER

野﨑 繁裕

株式会社M&Aスタジオ 代表取締役CEO/中小企業診断士

滋賀銀行に2003年入行。法人融資を経て2014年から本部でM&Aアドバイザリーに従事し、2015年からの日本M&Aセンターへの出向を含む8年間で49件のM&A成約に関与。2022年よりM&Aスタジオ代表。著書『M&Aはアドバイザー選びが9割!』。YouTube「M&A STUDIO」でM&Aの実情を発信中。代表メッセージを読む

関連する記事