M&Aで後悔しないために|よくある失敗・トラブルと、売り手が自分で確かめたいこと

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  • 公開日2026年10月13日
M&Aで後悔しないために|よくある失敗・トラブルと、売り手が自分で確かめたいこと
結論先に答えを知りたい方へ

M&Aの後悔は、多くの場合「タイミング」「相手先」「条件」の3つに分けられます。どれも、結果の良し悪しより、決める前にどこまで確かめたかで防ぎやすくなります。

  • 最終契約書は仲介会社任せにせず、自分と弁護士などの専門家で確かめる
  • 個人保証は自動では外れない。外す時期と方法を契約前に決めておく
  • 不利なことほど最初に打ち明ける。隠したことは買収監査でほぼ見つかる

会社を売ったあとに、思っていたのと違ったと後悔したくない。ニュースで見るようなトラブルに巻き込まれたくない。M&Aを考え始めた社長の多くが、口には出さなくても、こうした不安を抱えています。

特に、会社の借入れに個人保証をしている社長にとっては、売ったあとに保証だけが残ることほど怖いものはありません。それこそ、夜も眠れなくなる話です。

この記事では、銀行でM&Aに携わってきた立場から、よくある失敗とトラブルを整理し、売り手が自分で確かめておきたいことをお伝えします。

M&Aの後悔は、3つに分けられる

これまで多くの譲渡に関わってきて、売ったあとの後悔はおおむね3つに分けられると感じています。

後悔の種類 よくある例 防ぐために
タイミング よくある例売ったあとに業績がさらに伸びた。もっと後でもよかった 防ぐために1社の話だけで決めず、複数の意見を聞いてから決める
相手先 よくある例社員が辞めた。社名を残すはずが変わった。約束した相手の経営陣が交代した 防ぐために社長の印象だけでなく、会社どうしの戦略が合うかで判断する
条件 よくある例手取りが思ったより少なかった。後払いの条件を満たせなかった。辞めたくても辞められない 防ぐために最終契約書を、自分と専門家で読み込んでから署名する
野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

売ったあとに業績が伸びても、まったく後悔していない社長もいます。逆に後悔している方は、情報が足りなかったり、時間が足りなかったり、急かされて決めたりしていることが多い。結果ではなく、どこまで深く考えて決められたかが大事なんです。

動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】

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相手先の後悔:会うのは数回。人柄だけで決めない

M&Aでは、売るまでに売り手と買い手の社長が会うのは、多くても5回ほどです。その数回で、相手の経営者としての力を見極めるのは簡単ではありません。また、相手が大きな会社であれば、経営陣は数年で交代します。約束した人がいなくなれば、約束が守られにくくなることもあります。

ですから、相手の社長の印象だけで決めるのではなく、相手の会社の戦略と、自社の向かう方向が合っているかで判断するほうが、後悔は少なくなります。社名や社員の処遇など、譲れないことは契約の前に話し合い、書面に残しておきましょう。

動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】

▶ 9:21 から再生されます
Q&A「他にも候補がいるから早く決めて」と急かされたら、どうすればいいですか?

条件の後悔:最終契約書は仲介会社任せにしない

売却価格には満足したのに、条件で損をしていたと後から気づく。これもよくある後悔です。手取りを計算しないまま売った、株価の後払い(アーンアウト)の条件を満たせなかった、引き継ぎで会社に残る期間が長すぎた、といったケースです。

こうした条件は、最終契約書で決まります。最終契約書は法的な効力を持ち、トラブルが起きたときはこの契約書をもとに判断されます。仲介会社がひな型を作るのが一般的ですが、最後に確かめて決めるのは、売り手自身です。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

最終契約書の中身を、売った社長がどこまで理解できているか。私の感覚では、1割ほどしか理解できていない方が多いと思います。仲介会社が作ったひな型のまま、弁護士のチェックも入れずに契約しているケースも少なくありません。

長くて分かりにくければ、専門家に相談しながら、弁護士に契約書を確認してもらってください。指摘を受けた点を、仲介会社を通じて買い手と交渉すればいいんです。

動画で見るM&A仲介任せはNG|経営者が見落とす最終契約書の盲点【M&Aジャーニー】

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Q&A最終契約書は仲介会社に任せていいですか?自分で何を確認すべきですか?Q&A契約書に「プロサンドバッキング条項」が入っていたら、何が危ないのですか?Q&A売ったあとの手取りが思ったより少なかった、とならないためには?

個人保証は、自動では外れない

「会社を売れば、借金は買い手が引き継ぐから、保証も自動で外れる」。そう思い込んでいる社長は少なくありません。でも実際には、借金は会社のもの、保証は社長個人と銀行の契約です。きちんと手続きをしなければ、保証は社長に残ります。

外す時期 やり方 注意したいこと
売る前に外す やり方銀行と交渉し、保証を外してから売る 注意したいこといちばん安全。ただ数か月〜1年以上かかることもある
売るのと同時に外す やり方売り手・買い手・銀行の三者で調整する 注意したいこと事前の準備がかなり必要
売ったあとに外す やり方買い手が銀行と交渉して外す 注意したいこと外すのは買い手。売り手は手を出せないので、いちばん危ない
野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

借入れが残っていても、個人保証がついていても、会社は売れます。大事なのは、売る前に保証の状態を確かめること、契約書に書くこと、期限を切ること。この3つを守れば、保証が残るリスクの大半は消えると思います。

動画で見る会社売却で個人保証だけが残る最悪パターン|保証解除の手順【教えて野﨑さん】

▶ 1:58 から再生されます
Q&A会社を売ったのに、個人保証が外れないことはありますか?

不利なことほど、最初に打ち明ける

決算の数字を整えていた、帳簿に載っていない未払いがある。そうした事情は、言い出しにくいものです。ただ、基本合意のあとに行われる買収監査(デューデリジェンス)では、帳簿や証憑が細かく確認されます。隠していたことは、ほぼ見つかると考えておいたほうが安全です。

後から見つかれば、株価が下がるだけでなく、買い手の信頼を失い、話そのものがなくなることもあります。逆に、最初にアドバイザーへ打ち明けておけば、その事実を前提に、どう進めるかを一緒に考えられます。

Q&A決算書に粉飾があると、会社は売れなくなりますか?Q&A訴訟を抱えている会社でも、M&Aで売ることはできますか?

話がまとまらない「ブレイク」も、珍しくない

買い手との交渉が始まったあとに話がなくなることを、M&Aでは「ブレイク」と呼びます。トップ面談のあとに条件が折り合わなかったり、買収監査で想定外のことが見つかったりして起こります。ブレイクは珍しいことではありません。

避けるためにできるのは、案件の情報を最初に丁寧に整理してくれる、経験のあるアドバイザーを選ぶこと。そして、どうしても今決めなければ、という状況になる前に、余裕を持って進めることです。候補が複数いれば、1社とまとまらなくても、ほかの相手と話を続けられます。

Q&AM&Aの「ブレイク(破談)」は、どんなときに起きますか?Q&A着手金を払って契約したのに、買い手が見つからず連絡もありません。どうすればいいですか?

知ってから決める。契約の前に、もう一人の目を

後悔していない社長に共通しているのは、売ったあと3年後の自分の姿を書き出していたこと、家族や信頼できる役員と何度か本音で話していたこと、そして、継ぐ・売る・続けるといった選択肢や、アドバイザー、買い手を比べて決めていたことです。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

会社を売るのは、社長にとって一生に一度の大事な決断です。何もわからないまま判を押すのは、やめたほうがいいと思います。知ってから決める。これを大事にしてほしいと思っています。

契約書にサインする前であれば、まだ間に合います。不安なことがあれば、セカンドオピニオンとして一度ご相談ください。

GUIDEM&Aのセカンドオピニオン|進行中の話に違和感があるとき、契約前に確かめたいこと

よくある質問

Q借入れや個人保証が残っていても、会社は売れますか?

A売れます。大切なのは、保証をどの時期に、どう外すかを契約の前に決めておくことです。売る前に銀行と相談して外しておくのが、いちばん安全です。

Q最終契約書を弁護士に見てもらうと、費用がかかりますか?

A費用はかかりますが、売ったあとのトラブルを防ぐための大切な確認です。どの部分を重点的に見てもらうかを含めて、事前に相談しておくとよいと思います。

Qトップ面談で相手の印象が良ければ、安心してよいですか?

A印象は大事ですが、会う回数は限られます。相手の会社の戦略と自社の方向が合っているか、譲れない条件が契約書に書かれているかも、あわせて確かめてください。

Qすでに基本合意を結んでいます。今から確かめても間に合いますか?

A最終契約と代金の決済の前であれば、契約書の修正などで対応できることがあります。早めにご相談ください。

※契約内容や法律・税金の扱いは、弁護士や税理士などの専門家と確認しながら進めてください。

SECOND OPINION

今の進め方でいいのか、
第三者の目で確かめられます

すでにアドバイザーと話が進んでいる段階でも、売ると決めていない段階でも、ご相談いただけます。今の進め方で良ければ「そのままで大丈夫です」とお伝えします。初回のご相談は無償です。

野﨑繁裕

WRITER

野﨑 繁裕

株式会社M&Aスタジオ 代表取締役CEO/中小企業診断士

滋賀銀行に2003年入行。法人融資を経て2014年から本部でM&Aアドバイザリーに従事し、2015年からの日本M&Aセンターへの出向を含む8年間で49件のM&A成約に関与。2022年よりM&Aスタジオ代表。著書『M&Aはアドバイザー選びが9割!』。YouTube「M&A STUDIO」でM&Aの実情を発信中。代表メッセージを読む

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