M&Aで後悔しないために|よくある失敗・トラブルと、売り手が自分で確かめたいこと
M&Aの後悔は、多くの場合「タイミング」「相手先」「条件」の3つに分けられます。どれも、結果の良し悪しより、決める前にどこまで確かめたかで防ぎやすくなります。
- 最終契約書は仲介会社任せにせず、自分と弁護士などの専門家で確かめる
- 個人保証は自動では外れない。外す時期と方法を契約前に決めておく
- 不利なことほど最初に打ち明ける。隠したことは買収監査でほぼ見つかる
会社を売ったあとに、思っていたのと違ったと後悔したくない。ニュースで見るようなトラブルに巻き込まれたくない。M&Aを考え始めた社長の多くが、口には出さなくても、こうした不安を抱えています。
特に、会社の借入れに個人保証をしている社長にとっては、売ったあとに保証だけが残ることほど怖いものはありません。それこそ、夜も眠れなくなる話です。
この記事では、銀行でM&Aに携わってきた立場から、よくある失敗とトラブルを整理し、売り手が自分で確かめておきたいことをお伝えします。
CONTENTS
M&Aの後悔は、3つに分けられる
これまで多くの譲渡に関わってきて、売ったあとの後悔はおおむね3つに分けられると感じています。
| 後悔の種類 | よくある例 | 防ぐために |
|---|---|---|
| タイミング | よくある例売ったあとに業績がさらに伸びた。もっと後でもよかった | 防ぐために1社の話だけで決めず、複数の意見を聞いてから決める |
| 相手先 | よくある例社員が辞めた。社名を残すはずが変わった。約束した相手の経営陣が交代した | 防ぐために社長の印象だけでなく、会社どうしの戦略が合うかで判断する |
| 条件 | よくある例手取りが思ったより少なかった。後払いの条件を満たせなかった。辞めたくても辞められない | 防ぐために最終契約書を、自分と専門家で読み込んでから署名する |
売ったあとに業績が伸びても、まったく後悔していない社長もいます。逆に後悔している方は、情報が足りなかったり、時間が足りなかったり、急かされて決めたりしていることが多い。結果ではなく、どこまで深く考えて決められたかが大事なんです。
動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】
▶ 3:06 から再生されます相手先の後悔:会うのは数回。人柄だけで決めない
M&Aでは、売るまでに売り手と買い手の社長が会うのは、多くても5回ほどです。その数回で、相手の経営者としての力を見極めるのは簡単ではありません。また、相手が大きな会社であれば、経営陣は数年で交代します。約束した人がいなくなれば、約束が守られにくくなることもあります。
ですから、相手の社長の印象だけで決めるのではなく、相手の会社の戦略と、自社の向かう方向が合っているかで判断するほうが、後悔は少なくなります。社名や社員の処遇など、譲れないことは契約の前に話し合い、書面に残しておきましょう。
動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】
▶ 9:21 から再生されます条件の後悔:最終契約書は仲介会社任せにしない
売却価格には満足したのに、条件で損をしていたと後から気づく。これもよくある後悔です。手取りを計算しないまま売った、株価の後払い(アーンアウト)の条件を満たせなかった、引き継ぎで会社に残る期間が長すぎた、といったケースです。
こうした条件は、最終契約書で決まります。最終契約書は法的な効力を持ち、トラブルが起きたときはこの契約書をもとに判断されます。仲介会社がひな型を作るのが一般的ですが、最後に確かめて決めるのは、売り手自身です。
最終契約書の中身を、売った社長がどこまで理解できているか。私の感覚では、1割ほどしか理解できていない方が多いと思います。仲介会社が作ったひな型のまま、弁護士のチェックも入れずに契約しているケースも少なくありません。
長くて分かりにくければ、専門家に相談しながら、弁護士に契約書を確認してもらってください。指摘を受けた点を、仲介会社を通じて買い手と交渉すればいいんです。
動画で見るM&A仲介任せはNG|経営者が見落とす最終契約書の盲点【M&Aジャーニー】
▶ 0:30 から再生されます個人保証は、自動では外れない
「会社を売れば、借金は買い手が引き継ぐから、保証も自動で外れる」。そう思い込んでいる社長は少なくありません。でも実際には、借金は会社のもの、保証は社長個人と銀行の契約です。きちんと手続きをしなければ、保証は社長に残ります。
| 外す時期 | やり方 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 売る前に外す | やり方銀行と交渉し、保証を外してから売る | 注意したいこといちばん安全。ただ数か月〜1年以上かかることもある |
| 売るのと同時に外す | やり方売り手・買い手・銀行の三者で調整する | 注意したいこと事前の準備がかなり必要 |
| 売ったあとに外す | やり方買い手が銀行と交渉して外す | 注意したいこと外すのは買い手。売り手は手を出せないので、いちばん危ない |
借入れが残っていても、個人保証がついていても、会社は売れます。大事なのは、売る前に保証の状態を確かめること、契約書に書くこと、期限を切ること。この3つを守れば、保証が残るリスクの大半は消えると思います。
動画で見る会社売却で個人保証だけが残る最悪パターン|保証解除の手順【教えて野﨑さん】
▶ 1:58 から再生されます不利なことほど、最初に打ち明ける
決算の数字を整えていた、帳簿に載っていない未払いがある。そうした事情は、言い出しにくいものです。ただ、基本合意のあとに行われる買収監査(デューデリジェンス)では、帳簿や証憑が細かく確認されます。隠していたことは、ほぼ見つかると考えておいたほうが安全です。
後から見つかれば、株価が下がるだけでなく、買い手の信頼を失い、話そのものがなくなることもあります。逆に、最初にアドバイザーへ打ち明けておけば、その事実を前提に、どう進めるかを一緒に考えられます。
Q&A決算書に粉飾があると、会社は売れなくなりますか?Q&A訴訟を抱えている会社でも、M&Aで売ることはできますか?話がまとまらない「ブレイク」も、珍しくない
買い手との交渉が始まったあとに話がなくなることを、M&Aでは「ブレイク」と呼びます。トップ面談のあとに条件が折り合わなかったり、買収監査で想定外のことが見つかったりして起こります。ブレイクは珍しいことではありません。
避けるためにできるのは、案件の情報を最初に丁寧に整理してくれる、経験のあるアドバイザーを選ぶこと。そして、どうしても今決めなければ、という状況になる前に、余裕を持って進めることです。候補が複数いれば、1社とまとまらなくても、ほかの相手と話を続けられます。
Q&AM&Aの「ブレイク(破談)」は、どんなときに起きますか?Q&A着手金を払って契約したのに、買い手が見つからず連絡もありません。どうすればいいですか?知ってから決める。契約の前に、もう一人の目を
後悔していない社長に共通しているのは、売ったあと3年後の自分の姿を書き出していたこと、家族や信頼できる役員と何度か本音で話していたこと、そして、継ぐ・売る・続けるといった選択肢や、アドバイザー、買い手を比べて決めていたことです。
会社を売るのは、社長にとって一生に一度の大事な決断です。何もわからないまま判を押すのは、やめたほうがいいと思います。知ってから決める。これを大事にしてほしいと思っています。
契約書にサインする前であれば、まだ間に合います。不安なことがあれば、セカンドオピニオンとして一度ご相談ください。
よくある質問
Q借入れや個人保証が残っていても、会社は売れますか?
A売れます。大切なのは、保証をどの時期に、どう外すかを契約の前に決めておくことです。売る前に銀行と相談して外しておくのが、いちばん安全です。
Q最終契約書を弁護士に見てもらうと、費用がかかりますか?
A費用はかかりますが、売ったあとのトラブルを防ぐための大切な確認です。どの部分を重点的に見てもらうかを含めて、事前に相談しておくとよいと思います。
Qトップ面談で相手の印象が良ければ、安心してよいですか?
A印象は大事ですが、会う回数は限られます。相手の会社の戦略と自社の方向が合っているか、譲れない条件が契約書に書かれているかも、あわせて確かめてください。
Qすでに基本合意を結んでいます。今から確かめても間に合いますか?
A最終契約と代金の決済の前であれば、契約書の修正などで対応できることがあります。早めにご相談ください。
※契約内容や法律・税金の扱いは、弁護士や税理士などの専門家と確認しながら進めてください。
SECOND OPINION
今の進め方でいいのか、
第三者の目で確かめられます
すでにアドバイザーと話が進んでいる段階でも、売ると決めていない段階でも、ご相談いただけます。今の進め方で良ければ「そのままで大丈夫です」とお伝えします。初回のご相談は無償です。
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