契約書に「プロサンドバッキング条項」が入っていたら、何が危ないのですか?

  • カテゴリ解説記事
  • 公開日2026年10月14日
契約書に「プロサンドバッキング条項」が入っていたら、何が危ないのですか?
短い答え野﨑が答えます

プロサンドバッキング条項は、「買い手が売り手の表明保証違反を知っていても、売り手の責任は変わらない」という定めです。買収監査で見つかった問題を理由に株価を下げたうえで、同じ問題についてあとから補償まで求められるおそれがあります。監査で分かったことは違反にしない「アンチサンドバッキング」への修正を、弁護士と一緒に検討しましょう。

  • 表明保証は、売り手が「会社の中身はこうです」と約束し、違えば補償するもの
  • 監査で分かった問題が、減額と補償の二重になっていないかを確かめる
  • 条文の判断は、M&Aに詳しい弁護士と一緒に

まず「表明保証」とは

最終契約書では、売り手が会社の中身について「こうです」と約束します。たとえば、売掛金や在庫の金額が正しいこと、帳簿にない負債がないこと、などです。これを「表明保証」といい、事実と違っていた場合には、売り手が買い手に補償する定めになっていることが一般的です。

プロサンドバッキングと、アンチサンドバッキング

定め方 中身 売り手から見ると
プロサンドバッキング 中身買い手が違反を知っていた、または知り得た場合でも、売り手の責任は変わらない 売り手から見ると監査で分かって減額に応じた問題でも、あとから補償を求められるおそれがある
アンチサンドバッキング 中身買い手が監査などで知っていたことは、表明保証の違反にならない 売り手から見ると監査で分かった問題は、減額などで整理すれば、あとから蒸し返されにくい

「サンドバッグ」は、もともと砂を詰めた袋を武器にしたことから来た言葉で、無害に見えたものが突然武器になる、という意味合いがあります。相手の違反を知りながら取引を進め、あとから責任を問う、という使われ方です。

漫画の事例:減額したのに、補償も残る契約書

ある会社の買収監査で、回収できていない売掛金2,000万円、不良在庫1,000万円、未払いの残業代1,000万円、合わせて4,000万円が見つかりました。買い手は、基本合意で決めた株価6億円から4,000万円を差し引くよう求め、社長は応じました。

ところが、仲介会社が持ってきた最終契約書には、プロサンドバッキング条項が入っていました。売掛金や在庫の金額、未払いの残業代がないことを表明保証させる内容のままです。減額に応じたのに、同じ問題で表明保証の違反を問われるおそれが残っていたのです。セカンドオピニオンとして入った野﨑(漫画ではマックス)は、アンチサンドバッキング条項への修正を求めました。

動画で見るプロサンドバッキング条項って何?契約書に仕組まれた罠【マンガでわかるM&A】

▶ 1:32 から再生されます

※漫画は、野﨑が関わった実際の相談をもとに、内容を一部変えて描いたものです。

条文の言葉づかいに、気づけるか

表明保証の条文は長く、言葉も独特です。仲介会社のひな形のまま、気づかずに署名してしまうことも起こりえます。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

私の感覚では、最終契約書の内容を、譲渡した社長がどこまで理解できているかというと、1割ぐらいしか理解できていない方が多いのではないかと思っています。仲介会社が作ってきたひな形で、弁護士のチェックも入れずに契約しているケースも多いと思います。

今なら、AIに読ませてみて、自分なりの仮説を立てる材料にするのもいいかもしれません。そのうえで、専門家に確かめてもらうことが大事です。

動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】

▶ 15:01 から再生されます

最終契約書で、確かめておきたいこと

  • 表明保証の項目何について「こうです」と約束しているのかを、一つずつ確かめる
  • 監査で分かったことの扱い減額などで整理した問題が、表明保証の違反にならない書き方になっているか
  • 補償の範囲と期間どこまで、いつまで補償の責任を負うのか
  • 専門家のチェックM&Aに詳しい弁護士に、売り手の立場から見てもらったか
Q&A最終契約書は仲介会社に任せていいですか?自分で何を確認すべきですか?Q&A買収監査(デューデリジェンス)では、何を調べられるのですか?

※契約内容や法律・税金の扱いは、弁護士や税理士などの専門家と確認しながら進めてください。

GUIDEM&Aで後悔しないために|よくある失敗・トラブルと、売り手が自分で確かめたいこと

SECOND OPINION

今の進め方でいいのか、
第三者の目で確かめられます

すでにアドバイザーと話が進んでいる段階でも、売ると決めていない段階でも、ご相談いただけます。今の進め方で良ければ「そのままで大丈夫です」とお伝えします。初回のご相談は無償です。

野﨑繁裕

WRITER

野﨑 繁裕

株式会社M&Aスタジオ 代表取締役CEO/中小企業診断士

滋賀銀行に2003年入行。法人融資を経て2014年から本部でM&Aアドバイザリーに従事し、2015年からの日本M&Aセンターへの出向を含む8年間で49件のM&A成約に関与。2022年よりM&Aスタジオ代表。著書『M&Aはアドバイザー選びが9割!』。YouTube「M&A STUDIO」でM&Aの実情を発信中。代表メッセージを読む

関連する記事