会社を売るか、売らないか|売り時の考え方と、決める前に整理しておきたいこと
誰にとっても正しい売り時はありません。目安になるのは、社長が引退したい時期と、会社の業績が良い時期が重なるときです。そして、売るか決める前に「売ったあとの暮らし」と「売る以外の選択肢」を並べて考えておくことが、後悔しない判断につながりやすくなります。
- 相談を始めてから引き継ぎが終わるまで、5年ほどかかることもある
- 手元に残るお金と、3年後の自分の姿を先に描いておく
- 全部売る以外にも、一部だけ売る、継ぐ、今は売らずに会社を良くするという道がある
業績は悪くない。でも、この先も今の熱量で経営を続けられるのか、正直わからない。会社を売るという考えが頭をよぎっても、まだ早い気もするし、売ったら後悔するかもしれない。
こうした迷いは、社員にも、取引先にも、ときには家族にも話しにくいものです。M&A会社に問い合わせたら、そのまま売る方向に話が進んでしまいそうで、それも怖い。そうして、一人で考え続けている社長は少なくありません。
この記事では、売るか売らないかを決める前に整理しておきたいことを、これまで多くの経営者の判断に立ち会ってきた経験からお伝えします。売ると決めていない方のための記事です。
CONTENTS
売り時の目安は「引退したい時期」と「業績が良い時期」が重なるとき
会社の価値は、業績が良いときのほうが高く評価されやすくなります。一方で、社長には年齢があり、これからの人生の計画があります。業績だけを見て売り時を決めることも、年齢だけで決めることもできません。
そのため私は、社長が引退したいと考える時期と、業績が良い時期が重なるときが、ひとつの目安になると考えています。まだ若く、事業が伸びている最中なら、無理に売る必要はありません。
いつが適切かは、経営者それぞれのライフプランによって違うので、一概には言えません。ただ、引退したい時期と業績の良い時期が重なっているときは、いちばん納得のいく譲渡ができる可能性があると思います。
動画で見る会社を売るベストタイミングはいつなのか?【教えて野﨑さん】
▶ 1:01 から再生されます相談から引き継ぎまで、5年ほどかかることもある
「売りたい」と思ってから、すぐに売れるわけではありません。アドバイザーと契約してから成約までは、早くて1年ほど、長ければ2〜3年かかります。さらに成約後も、1〜2年ほどかけて引き継ぎをすることが多く、着手から数えると5年ほどかかることもあります。
準備・相談
会社の状態を整理し、相談先を選ぶ。価値を高めるなら、ここに数年かける。
相手探し〜成約
アドバイザーと契約してから、早くて1年、長ければ2〜3年。
引き継ぎ
成約後、1〜2年ほどかけて社員や取引先との関係を引き継ぐ。
ですから、たとえば65歳で引退したいなら、60歳ごろには動き始めたいところです。会社の価値を高めてから売りたいなら、7〜10年前から準備しておくと、選べる道が広がります。急ぐ必要はありませんが、逆算しておくことは大切です。
70代になって、銀行に言われてから考える間もなく動く、という方も少なくありません。その段階では社長の気力も落ちていて、納得のいく判断がしにくくなります。遅くとも55歳ぐらいからは準備しておいたほうがいいと思います。売らないとしても、売れる会社にしておくことには意味があります。
動画で見る会社を売るベストタイミングはいつなのか?【教えて野﨑さん】
▶ 3:38 から再生されます売るか決める前に、売ったあとの暮らしを描いておく
会社を売ると、多くの場合、役員報酬という毎月の収入がなくなります。たとえば1億円で売れても、税金や手数料が引かれ、手元に残るのはそれより少なくなります。そのお金で、この先の暮らしをどう成り立たせるのか。ここが見えないまま売ると、あとで不安や後悔につながりやすくなります。
40歳の社長が、手元に7,000万円ほどを残して会社を売ったとします。その後に収入の当てがないなら、それで一生暮らしていくのは簡単ではありません。私のところに相談に来られる方は、売ることに意識が向きすぎて、その後のことまで考えられていない方が多いと感じます。
売る前に、売ったあとのお金の計画をどこまで具体的に描けているか。私が相談を受けるときは、必ずそこを一緒に考えるようにしています。
お金だけではありません。後悔の少ない社長に共通しているのは、売ったあと3年後の自分の姿を、具体的に書き出していたことです。どこに住み、時間をどう使い、家族とどう過ごし、収入をどう得ているか。うまくいかなかった場合も含めて、A4の紙1枚に書き出してみてください。
動画で見る会社売却の最適な時期とイグジット後のお金のリアル【教えて野﨑さん】
▶ 2:44 から再生されます※手元に残る金額は、譲渡の方法や税制、手数料によって変わります。具体的な試算は、税理士などの専門家と確認しながら進めてください。
希望の金額と買い手の評価に差があるとき
「3億円なら売ってもいい」と考えていても、会社の財務から見た評価が2億円ほど、ということはよくあります。そうしたときの考え方は、大きく2つです。
| 考え方 | 向いている場合 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 経営を続けて、差を埋める | 向いている場合まだ若く、利益を積み上げられる見込みがある | 気をつけたいこと経営を続けるあいだのリスクは抱え続ける |
| 一度、買い手を探してみる | 向いている場合先行きに不安がある。実際の評価を知って判断したい | 気をつけたいこと希望に合う相手が見つからないこともある。そのときは数年後に再検討 |
全部売るだけが選択肢ではない
会社を売るというと、株を全部手放して経営から離れるイメージがあるかもしれません。でも実際には、もっと柔軟に組み立てられます。
売るか売らないかの間にある選択肢
- 株の一部だけを譲る一緒に伸びていけそうな相手に株の一部を譲り、相手の力も借りて会社を伸ばしてから、残りを譲る。2段階で出口を迎える方法です。
- 社長として残る期間を決める売ったあとも一定期間、社長や役員として残るなど、関わり方はある程度柔軟に決められます。
- 親族や社員に継ぐ親族への承継、社員への承継、第三者への譲渡を、同じテーブルに並べて比べます。
- 今は売らずに、会社を良くする業績や会社の見え方を整えてから考える。売らない場合にも、会社を良くすることには意味があります。
M&Aスタジオでは、Webマーケティングで売上や会社の見え方を整えるお手伝いもしています。今すぐ売るより、数年かけて会社の価値を高めてから考えたほうがいい、という結論になることもあります。
動画で見る会社を売って成長させる2段階イグジット【M&Aを漫画で解説】
▶ 4:20 から再生されます後悔しない社長は、決め方に共通点がある
売ったあとに業績がさらに伸びることもあれば、売らずにいたら業績が落ちることもあります。先のことは誰にもわかりません。それでも後悔しない社長と、後悔する社長がいます。違いは、結果ではなく、決め方にあると私は考えています。
ファンドに会社を譲渡したある経営者は、譲渡後に業績が大きく伸びましたが、まったく後悔していません。自分が納得できる手順を踏んで決めたからだと思います。
逆に後悔している方は、情報が足りなかったり、時間が足りなかったり、急かされて決めたりしていることが多い。どこまで深く考えて決められたかが大事なんです。
動画で見るM&Aで後悔しやすい社長の特徴【教えて野﨑さん】
▶ 3:06 から再生されます売ると決める前に、まずは選択肢を並べてみる
迷っているときにいちばん避けたいのは、迷ったまま、誰かに急かされて決めてしまうことです。私が迷っている社長にお伝えしているのは、次の3つです。
立ち止まる
迷ったまま進むのが一番危ない。急かされているときほど、一度深呼吸を。
全体を見渡す
目の前の一人の話だけでは、視野が偏りがち。中立の視点をひとつ持つ。
複数の意見を確かめる
同じ結論なら自信を持って進め、違えば判断を見直せばいい。
売る、社員に継ぐ、子どもに継ぐ、あるいは最終的には廃業ということもあるかもしれません。それを全部テーブルに並べて、同じ立場で一緒に眺める。私がやるのはそれだけです。急かすことは一切しません。
今は売らないほうがいい、という結論になることもあります。それも立派な判断だと思います。
動画で見る会社売却、誰を信じる? M&Aで迷った社長が決断前にやるべき3つのこと【教えて野﨑さん】
▶ 8:51 から再生されますよくある質問
Qまだ40代です。売るかどうか考えるのは早すぎますか?
A早すぎることはありません。売るかどうかを決めるためではなく、将来の選択肢を知っておくために考えておくのは意味のあることです。会社の価値を高める準備には、何年もかかることがあります。
Q「税制が変わる前に売ったほうがいい」と言われました。急いだほうがいいですか?
A税制の変化は判断材料のひとつですが、それだけを理由に、準備が足りないまま急いで決めることはおすすめしません。税金の扱いは専門家と確認しながら、ご自身の計画全体の中で判断してください。
Q業績が落ちているときに売ると、損をしますか?
A業績が良いときのほうが評価されやすいのは確かです。ただ、業績を立て直してから考えるのか、今の状態で一度相手を探してみるのかは、会社や社長の状況によって変わります。
Q相談したら、売る方向に話を進められませんか?
AM&Aスタジオは、会社を売っていただくことを目的にしていません。今は売らないほうがいい、という結論になることもあります。
FIRST STEP
売ると決めていなくても、
選択肢を一緒に並べられます
売る、継ぐ、今は売らずに会社を良くする。どれが合うかは、社長の人生の計画と会社の状態によって変わります。まだ何も決めていない段階でも構いません。初回のご相談は無償です。
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