買収監査(デューデリジェンス)では、何を調べられるのですか?

  • カテゴリ解説記事
  • 公開日2026年10月14日
買収監査(デューデリジェンス)では、何を調べられるのですか?
短い答え野﨑が答えます

買収監査(デューデリジェンス)は、基本合意のあとに、買い手が自分の責任と費用で会計士などを選び、会社を詳しく調べるものです。中心は財務で、会社の規模や買い手の方針によって、法務・税務・労務・ITなども調べます。帳簿や契約書、在庫や債権の中身まで確かめられますが、入口で正直に伝えていれば、大きな減額になることは多くありません。

  • 監査をするのはアドバイザーではなく、買い手が選んだ専門家
  • 財務だけのこともあれば、法務・労務・ITまで広げることもある
  • 最初に隠したことは、ここでほぼ見つかる

買収監査は、誰が、何のためにするのか

基本合意を結ぶと、買い手は会社を詳しく調べる段階に入ります。アドバイザーがするものだと思っている方も多いのですが、買い手が自分で監査をする専門家を選び、費用も払って行います。何か大きな問題が見つかれば、買い手にとっては見送ることも大切な判断になります。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

売り手さんからすると、買収監査はかなりつらいイベントになることが多いです。入口の案件化の資料集めでも皆さん悲鳴をあげられますが、買収監査はもう少ししんどいかもしれません。

ただ、入口でしっかり資料を出していれば、その資料は買い手にすでに渡っています。足りない資料だけを求められる、というケースが多いと思います。

動画で見る基本合意契約から買収監査|経営者が知るべき交渉術と心構え【M&Aジャーニー】

▶ 3:33 から再生されます

調べられる範囲と、期間・費用の目安

項目 目安
調べる範囲 目安財務が中心。規模や方針によって法務・税務・労務・IT・事業の中身なども。小さな会社では財務だけのことも多い
期間 目安資料を事前に調べたうえで、社長への聞き取りを1〜2日ほど
費用(買い手が負担) 目安財務だけなら50万〜100万円ほど。範囲を広げると300万〜500万円ほどかかることも

※範囲・期間・費用は、2025年の動画での野﨑の説明にもとづく目安です。会社の規模や買い手の方針によって変わります。

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

裏を返すと、買い手は基本合意のあと、多くの場合は仲介会社に中間報酬を払い、さらに監査をする人にもお金を払って監査をするわけです。それぐらい本気だ、と見てもいいと思います。

何が見つかると、株価が変わるのか

買収監査では、帳簿の元になる記録から、取引の証拠となる書類まで、財務に関する資料がひと通り確かめられます。基本合意のときの認識と違うところが見つかれば、その分は株価を調整する理由になります。

見つかりやすいこと 起こりうること
回収が難しい売掛金 起こりうることその分が株価から差し引かれることがある
価値のない在庫や不良資産 起こりうること株価の減額。中身によっては話がなくなることも
帳簿にない負債(未払いの残業代など) 起こりうること株価の減額や、最終契約での手当てが必要になる
決算の数字の調整(粉飾) 起こりうること信頼を失い、話がなくなることが多い

動画で見る会社売却でやってはいけない粉飾決算の代償【M&Aを漫画で解説】

▶ 2:25 から再生されます
Q&A決算書に粉飾があると、会社は売れなくなりますか?

最近増えている、労務の論点

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

最近、特に気にされるのが労務の問題です。たとえば労使の関係で訴訟が起きていると、買い手はその1件だけでなく、ほかにもあるのでは、と神経質になります。

株価の話だけでなく、最終契約にどう織り込むのか。その時点で訴訟が終わっていなければ、終わった場合にどういう支払いにするのか。こういったことが論点になることもあります。

動画で見る基本合意契約から買収監査|経営者が知るべき交渉術と心構え【M&Aジャーニー】

▶ 7:08 から再生されます
Q&A最終契約書は仲介会社に任せていいですか?自分で何を確認すべきですか?

買収監査を、落ち着いて乗り越えるために

野﨑繁裕
野﨑の視点M&Aスタジオ代表・中小企業診断士

売り手の社長は、監査で株価を下げられるのでは、と不安になるかもしれません。その可能性はありますが、私の経験では、監査のあとに株価が大きく減額されたケースは5%もなかったと思います。入口の情報整理をきちんとやっていた案件ばかりだった、というのも大きいと思います。

買収監査の前に、確かめておきたいこと

  • 案件化で、不利なことも伝えたか伝えていないことがあれば、監査の前にアドバイザーへ打ち明ける
  • 資料をすぐに出せる準備があるか決算書、契約書、在庫や債権の明細などを整理しておく
  • 社員に知られずに進める段取りがあるか日程や場所を、アドバイザーと相談しておく
  • 見つかったときの対応を相談したか株価の調整か、契約での手当てか。専門家と一緒に考える
Q&A「案件化」とは何ですか?なぜ最初の準備が大切なのですか?

※契約内容や法律・税金の扱いは、弁護士や税理士などの専門家と確認しながら進めてください。

Q&A会社の評価額を下げてしまうのは、どんなことですか?Q&A売る前に、売り手側で先に財務の調査(DD)をしておくと何が変わりますか?GUIDE会社売却の流れ|相談から引き継ぎまでのステップと、各段階で社長が気をつけたいこと

PROCESS

どの段階からでも、
進め方を一緒に確かめられます

これから相談先を決める段階でも、すでにアドバイザーと話が進んでいる段階でも構いません。会社の状況と目的に合う進め方とアドバイザーを、一緒に整理します。ご相談から選定までの費用はいただきません。

野﨑繁裕

WRITER

野﨑 繁裕

株式会社M&Aスタジオ 代表取締役CEO/中小企業診断士

滋賀銀行に2003年入行。法人融資を経て2014年から本部でM&Aアドバイザリーに従事し、2015年からの日本M&Aセンターへの出向を含む8年間で49件のM&A成約に関与。2022年よりM&Aスタジオ代表。著書『M&Aはアドバイザー選びが9割!』。YouTube「M&A STUDIO」でM&Aの実情を発信中。代表メッセージを読む

関連する記事